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第2部 「健康情報信託(仮称)」のあるべき姿

第1章 全体像と構成

 健康情報信託は、「国民健康情報機構」、「統合解析センター」、並びに「情報提供マネジメント室」の3つの機能で構成されます。以下にそれぞれの機能を説明します。

第2章 国民健康情報機構

 国民健康情報機構は、国民皆保険制度下に創出された個人(被保険者)の健康情報を収集します。国民健康情報機構はこれら個人健康情報を纏め、各個人にオンライン上の「個人健康情報アカウント(仮称)」として提供します。個人健康情報アカウントの閲覧は、原則個人の同意なく個人以外の者に開示されることはありません。このため、個人健康情報アカウントの初期設定は、個人のみが閲覧できるものとしますが、より最適な医療、健康維持・増進、またより豊かな生活設計を意図した自発的な選択肢として、幾つかのオプション設定も提供します。

国民健康情報機構の対象者
日本の国民皆保険制度に加入している全ての被保険者。
但し将来的には、外国人に有償で同様のサービスを提供することも検討する
個人健康情報アカウントにて管理される健康情報
収集される情報 医療機関や保険者が所有する、診療情報(カルテ・画像・検査値・レセプト)、並びに健診情報(特定健診、保険者の実施する健診)等のデータ
個人の自発的選択により追記される情報 コホート研究、臨床研究、治験等において創出されたデータ(個人の同意が得られた場合に限る)
個人が任意に自己負担で受診した健診情報のデータ
ゲノム情報や免疫プロファイリングを含むバイオロジックデータ
健康に影響を及ぼすと考え得る生活環境関連情報に関するデータ(例えば、5年ごとの保険証差し替えの際に被保険者からの問診票による提出を求める等により収集)
個人による、個人健康情報アカウントの活用方法:一次利用
基本設定
-個人による健康情報の閲覧
基本設定
個人は一括管理された健康情報を、オンライン上などのアクセスにより無償で閲覧することができる。
オプション設定(1)
- 個人による健康情報の追加
個人は、自らの個人健康情報アカウントに、自らが任意的に行う健診、ゲノム情報含むバイオロジックデータ、並びに健康に影響を及ぼす生活環境関連情報等を自発的に入力することができる。
さらに個人は、自らの個人健康情報アカウントに、自らが任意的に参加したコホート研究、臨床研究、治験等において創出されたデータを取り込むこともできる。
但し、個人の自発的選択により追記される情報は、国民皆保険下に創出される情報と違うカテゴリーで保管され、情報源は明確に区別する。
オプション設定(2)
個人が了承した個人以外の者による閲覧
個人は、特定の団体や人物と、個人健康情報アカウント(一部或いは全部)を共有できる。共有の目的は、例えば以下が考えられる。
① 主治医や地域内外の医療提供者:診察
② 医師:セカンドオピニオンの取得
③ 健保・栄養士・専門アドバイザー:健康管理指導や予防対策の検討
④ 研究者:疫学研究や臨床試験への参加
⑤ 薬剤師:お薬の処方・服薬指導
⑥ 医療提供者、行政:災害時・救急時の対応
⑦ 介護者:介護サービスと医療サービスの連携
⑧ 家族・後見人・保護者:参照
オプション設定(3)
- 希望する個人への情報提供
個人は、自らの希望に基づき、第三者から、個人の健康に有用な情報を、個人健康情報アカウントで受取ることができる。国民健康情報機構は、情報源の行政・医療機関・企業等には、個人の名前や住所を開示しない。個人に有用な情報として、例えば以下が考えられる。
行政・保険者・NPO・医学研究者等からの情報提供
(お知らせ・募集・注意喚起等)
① 予防接種に関する情報
② 難病情報センター・アレルギー相談センター・痛み医学情報研究センター・患者団体等からの情報
③ コホート研究、臨床研究、先進医療等に関する情報
④ 服薬中の薬の添付文書・リコール等に関する情報
⑤ 疾患に関連した新薬の承認情報
医療提供者・民間事業者等からの情報提供
① 医療・介護サービス(自己負担・混合診療)
② ヘルスコンシェルジェ型アドバイス
③ 病院・診療所の検索・予約サービス
④ 疾病の発症リスク・予後シミュレーション
⑤ ライフプランニング
⑥ 生命保険・医療保険
⑦ 病院周辺の情報サービス
 (例:がん患者に優しいサービスを提供するホテル情報等)
⑧ 食事宅配サービス
 (例:高血圧・糖尿病・腎疾患等の方に特化したお弁当)
⑨ その他ヘルスケア製品・サービス

国民健康情報機構は、個人健康情報アカウントに保管されている健康情報を匿名化し、大規模情報データベースとして統合解析センターへ提供します。

第3章 統合解析センター

 統合解析センターは、国民健康情報機構から匿名化された健康情報を受理し、多角的な統計解析を目的とした大規模情報データベース(統合解析用データベース(仮称))として、当該情報を一元的に管理します。統合解析用データベースを利活用することで得られた研究成果は、科学的/医学的エビデンスが付加されたデータベース(付加価値健康情報データベース(仮称))として管理され、さらに個人に還元可能なエビデンスと認められた場合は、希望者を対象に個人健康情報アカウントに還元されます。

 このような統合解析センターにおける運用を、我が国の標準的な公的健康情報基盤として位置付け、医学研究者・民間事業者に利活用を認める際のルールや情報取扱に関する制度、エビデンス認証の仕組み等を一元的に整備します。このような取り組みにより、国民に対して最適な医療・予防を提供し、国民の健康維持・増進に役立つ産業を創設・育成することを目指します。

第4章 情報提供マネジメント室

 情報提供マネジメント室は、上表オプション(2)・オプション(3)にあるように、一定のルールに基づき、個人が了承した者に対して情報閲覧を認めたり、同意ある個人へ有用情報を提供したりすることを、一元的に管理します。特に民間事業者・医療機関等からの情報提供に関しては、当該情報に対する個人からの評価も継続的におこなうことで、質や利便性向上を目指します。

第5章 特徴

 健康情報信託は、日本の国民皆保険制度、ならびに日本の文化ともいえる絆や助け合いの精神を活かし、国民が主体的に、自らの健康のため、また広く社会・次世代の生命・健康のために、健康情報を継続的に利活用できる仕組みとして、以下の特徴を持ちます。このような枠組みのもとで創設される健康情報信託は、国民のみならず医療機関、自治体、保険者、さらには海外からも理解を得て、人類の健康の向上に革新的な価値を創出できるものと考えています。

(1) 個人以外の者による個人健康情報アカウントの閲覧は、個人が自らの希望に基づき設定することができる。

(2) 各個人は、個人健康情報アカウントに、任意情報(自己負担による健診、ゲノム情報含むバイオロジックデータ、健康に影響を及ぼす生活環境関連情報、並びにコホート研究・臨床研究・治験等のデータ)を追加できる。

(3) 各個人は、個人健康情報アカウントにて、自らの健康状態や興味に関連した分野の有用情報を、自らの希望に基づき受取り、自らの健康推進に役立てることができる。

第6章 期待される効果

 健康情報信託を通じた透明性の高い健康情報の管理・共有により、改ざんや捏造のない健康情報の活用を促進することで、以下のような効果が期待されると考えています。

(1) 国民の健康寿命の延伸
五大疾患(がん、脳卒中、心筋梗塞、糖尿病、精神疾患)や希少疾病をはじめとした様々な疾患の適確な早期診断方法と、症状が現れる前に取組める予防対策を確立・普及し、国民の健康寿命延伸を実現します。

(2) 最適アクセスの促進
患者・個人(未病者)が、自らの健康状況を的確かつ容易に把握できる環境を整備し、個人健康価値(個人の健康に関する価値観)に基づいた最適な医療・介護・予防のアクセス・選択を促進します。

(3) 医療・介護の質の向上
行政や医療・介護提供者が、健康情報信託の厳格な仕組みのもとで個人の健康情報にアクセス可能となることにより、医療・介護の質が効率的・効果的に高まることになります。

(4) 医療イノベーションの創出
医学研究者・民間事業者は、信頼性の高いエビデンスと国民の参加に基づく健康情報信託の仕組みにアクセスすることで、新たな医療イノベーションを創出することが可能となります。また創薬活動においては、大幅なコスト削減と開発期間の短縮、並びに開発中止等のリスク回避を実現し、我が国の創薬事業の競争力を高めることにつながります。

(5) 新たな産業セクターの創出
ヘルスインフォマティックスの研究開発基盤を形成し、新たな産業セクターを誕生させます。これにより、総合的にヘルスケア産業の人材育成と雇用の拡大効果が見込まれます。

(6) ヘルスケア産業を通じた国際貢献
健康長寿国日本から、日本発先端医療技術を含むヘルスケア産業全般を国内外に拡張し、高い経済成長と国際貢献を成し遂げます。

健康情報信託が産業界にもたらすインパクトとして、以下の2つが重要であると考えています。

(1) 革新的な製品・サービスの創出
「匿名化個人健康情報データベース」の活用を通して、革新的な製品・サービスを効率的に創出・開発することができます。例えば医薬品に関しては、正確かつ大規模なデータを用いた解析が可能となることにより、日本における新薬開発が加速されることが期待されます。加えて、このようなデータベースは、臨床データと薬価データの統合解析による有効性と経済性の分析、有害事象発現の監視や使用成績調査への活用による市販後安全対策の強化、類似症例検索、実臨床における治療方法の比較、治療アウトカムの分析を通した最適な治療方針の選択など、様々な応用が考えられます。

(2) 最適な顧客へのデリバリー
創出・開発された革新的な製品・サービスを、「個人健康情報アカウント」の個人の希望に基づく情報提供を通じて、より適切な顧客に提案することができます。従来の不特定多数に向けた一律の情報提供とは異なり、効率よく有用な情報をターゲットを絞って届ける仕組みが整うことにより、予防対策の推進、早期診断、個別化医療、並びに適切な治療をしっかりと持続するコンプライアンス向上の実現にも繋がります。  

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